夏山登山口から弥山頂上1709mをめざす。
始まったばかりでまだまだ元気。
でも先は長いぞ。2.6kmあるという。
登山口を6時40分スタート。登山ガイドによると3合目まで1時間、6合目までさらに1時間、山頂までまた1時間、合計3時間とある。10時の神事に間に合うだろうか。
岡山自動車道の途中雨に見舞われたが、今日の天気は山陽側より山陰側の方が好天との予報。予報通りだ。相棒のSさんも晴れ男らしい。
このあたり、まだ夏山の雰囲気があってさわやか気分。
上に登るに従って新緑めいてきて面白い。
もう1合目。7時ちょうどだ。
もう2合目。7時20分だ。
春告げ鳥のウグイスの声に交じって初夏の鳥ホトトギスのつんざくような鋭い声も聞こえる。特徴のあるツツドリの声のほか、いろいろなさえずりが山路をにぎわしてくれる。他にもキツツキのドラミングはコゲラか。
鳥のさえずりが分かればもっと楽しいかも。
あら、もう3合目。7時38分だ。
途中小鳥のさえずりを聞きながら、オゾンを胸いっぱいに吸い込みながら、休み休み登ってきた。このペースが続けばガイド時間の3時間はクリアーできるはずだ。急いで進む必要はない。
もう4合目。7時56分だ。
途中イワカガミが可憐なピンクの花を咲かせていた。葉の表は確かに鏡のようにつやつや。スミレは何種類か咲いていたが、中でもキスミレは数少ないけれど目立つ存在だった。
僕の大好きなタニウツギも咲いていたりつぼみでいたり。ヤマアジサイはまだつぼみのままだ。
さあ5合目。目安の合目標があって歩きやすい。8時10分だ。
5合目の脇に登山の安全を祈って山ノ神が祭ってある。
もう6合目。8時34分だ。標準時間よりやや早めなので一休み。
避難小屋があって登山客のちょっとしたたまり場となっている。山ガールも交じってカラフルな賑わいだ。
北壁の荒々しい山容が姿を現す。
やや左に見える突起が三鈷峰、その右に小屋が見えた。8年前に登ったユートピア小屋だ。懐かしい。
この尾根の灌木を縫って進む。
ガレ場が続く。足の踏み場を一つ一つ選んで足を置く。
山開きの日とあって登山客が多い。狭いところでは登る人、下る人がお互い譲り合って渋滞気味。お蔭で脚に一服してもらえる。
植生もずいぶん変わってきた。背の高い樹木はもうない。
8合目あたりで視界が開け、下界が見えてきた。桝水高原あたりらしい。
9合目あたり木道が続く。もう頂上は近いぞ。
ダイセンキャラボクの群生が広がる。
木道は途中壊れてへこんだり傾いたりで危なっかしい個所もある。
ユートピアへ登った時は中宝珠、上宝珠越えのあたりが狭くて、木の根に足を置きロープに手をかけながらの場面があったが、今回はそれほど危険そうな場所はない。
道のすぐそばにイワカガミの群生地。感動ものだ。
「ほら9合目だよ」。
青い空に白い雲、ヘリコプターも加わって・・・否が応でもこちらの気分もわくわく。
頂上祭の会場が見えてきた。かなりの人だかり。
翌日の新聞記事によると、約500人の登山客が祭壇を囲んで安全を祈願したと。
横断幕は全国植樹祭とある。来年の植樹祭は鳥取県だそうだ。
時刻は9時51分。10時からの神事に間に合った。
頂上では神職と関係者が準備中。報道関係のカメラマンはもちろん、一般登山者のカメラも多い。
韓国からも2名の報道カメラマンが来ているという。
結構つらかったが間に合ってよかった。
「大山頂上」の銘板の前にしつらえてある祭壇。
祭は修祓から始まり降神の儀、献饌
、祝詞奏上と厳かに続く。
玉串奉奠
は神職に続き大山町長が。
そのあと関係者の奉奠が進み、最後に登山者代表の男女2人が締めをくくる。その女性は山口県からの登山者だとの紹介。
撤饌、昇神の儀と神事が滞りなく終わり、最後にお神酒拝戴。
僕もありがたく頂戴、ハッピーな気分でした。
来年の鳥取植樹祭をPRするキャラバン隊の隊長トッキーノ君。
係りの人が声をかける・・・「扇風機はまわってるか?」
「大丈夫」と帰った言葉に反して、とても暑そう。
式場の裏を覗くとこの通り荒々しい北壁の景観。
北壁といえばスイスのアイガー北壁。アイガーには比べようもないが・・・。
頂上付近は人が多くて弁当を開く場所もない。見晴らしのいい場所を求めて脇道の木道を少し下る。
人ひとり通れるくらいの狭い灌木の中を過ぎると急に視界が開けて、木道が続いている。木道が直角に折れる、やや広い場所を見つけて腰を下ろす。
見下ろすと近景は桝水高原のスキー場やゴルフ場、ホテルも見える。
遠景は弓ヶ浜半島の美しい曲線が見えたと思ったら霞んで消えたり。
絶景を眺めながらの冷えた缶ビールは極上の喉越し。おにぎりもうまい。重い荷物を肩に背負ってきた甲斐があるというもの。
去りがたい思いを胸に帰路につく。
下山の心。
色合いの複雑な岩肌があらわ。
登ってきた道をそのまま降りたんでは芸がない。
ということで、5合目近くまでは登ってきた道を下り、そこから行者谷コースへと進路を取ろう。
元谷別れから西へと行者谷コースをたどる。
登ってきた道よりは急こう配で、膝にはかなり応える。
降りたところが行者谷のガレ沢。ここから振り返ると迫力満点の北壁。
元谷を渡り林道を歩んで大神山神社への道を辿る。
まずは大神山神社の奥宮にたどり着く。
そして神社本殿への石畳を歩くころから雨が降り出す。雨脚が強くなったところで、雨宿りを兼ねてお店に入り、生姜入りの飴湯をいただく。
30分ばかり休んだからか、大腿四頭筋が痛くなってきた。歩きを続けているとまた慣れてくる。
大山寺を離れるころは雨もやみ、しっとりとした情緒を醸し出していた。
この後、車で帰路につく。
途中、関金温泉へと向かいかけたが、心変わりで湯原温泉へ。
河原の駐車場が満車なので遠い場所に駐車して「砂湯」で1日登山の汗を洗い流す。
年齢相応の体力の確認はできたか。大腿四頭筋は2日間、ふくらはぎは3日間の痛み。なによりも標準時間以内で弥山にたどり着いたことが、ある種の自信を呼び戻してくれたことは確かだ。